研究内容

東南・南アジアにける熱帯林を対象に、グローバルな森林保全政策とローカルな社会による資源利用の共生のあり方に関する研究をしている。昨今の熱帯林をめぐる国際的な議論は、生物多様性保全や地球温暖化防止のためには避けられないものの、新たな森林制度の導入は、地域社会に必ずしもよい影響を与えているわけではない。熱帯林をめぐるグローバル下における、ローカルな地域社会の現状をフィールドワークによって把握することにより、政府と地域社会が共生できる政策について検討している。現在、扱っているテーマは、国立公園などの保護地域、森林認証制度、フェアトレードコーヒー、コミュニティフォレストリー、非木材産物(NTFP)の利用、REDD+(途上国の森林減少・劣化からの排出削減)などで、インドネシアのガジャマダ大学と共同で研究をしている。また、ネパールやブータン(ブータン王立大学との共同研究)では、地元NGOとともに、エコツーリズムや野生動物と人間の共生について調査をしている。

 

国立公園の資源をめぐる政府と地域住民の協働資源管理

国際的に議論されている生物多様性保全に関わる政策を俯瞰しつつ、森林に暮らす人々のローカルな資源利用の知恵や、自然保護への意識と実践に焦点をあて、森林資源をめぐる政府と地域社会の対立の構図を明らかにする。また、気候変動枠組条約のもと実施されているREDD+やエコツーリズムについても研究をしている。

・『コーヒー豆を追いかけて 地球が抱える問題が熱帯林で見えてくる』2018, くもん出版

・How can social safeguards of REDD+ function effectively conserve forests and improve local livelihoods? A case from Meru Betiri National Park, East Java, Indonesia, Land, 2015, 4(1): 119-139

 

プライベート・ガバナンスとしての認証制度

国際的な森林認証であるFSCとインドネシアの独自の認証制度であるLEIを取り上げ、森林認証が地域社会の生計向上にどのように寄与し、持続可能な森林管理にどのようにつながっているのかを明らかにする。また、フェアトレードコーヒーを取り上げ、フェアトレードコーヒーが地域社会の社会的権利や経済的便益にどのように配慮しているかを解明している。

・Participatory Forest Management in a New Era: Integration of Rural Development and Climate Change, 2021, University of Tokyo Press

・「認証制度を通した市場メカニズム」『シリーズ 東南アジア地域研究 環境』2017, 慶応義塾大学出版会

 

参加型森林管理・コミュニティフォレストリー

途上国における参加型森林管理について研究している。国有地におけるコミュニティフォレストリーや慣習林(customary forest)の管理や法的枠組み、地域住民による非木材産物の管理・利用を解明している。

・「森林行政と慣習林」『アジアの法整備叢書 インドネシア:民主化とグローバリゼーションへの挑戦』2020, 旬報社

落葉採集林をめぐる森林・土地政策の変遷と地域住民の慣習的な管理・利用—ブータン・プナカ県の事例より, 林業経済研究 2021, 67(3): 11-23.

 

研究業績等の詳細については、こちら

 

講義科目

 

環境政策学、環境倫理学、生命の技術と倫理、環境問題と人間、環境と政治、環境の社会学、森林社会共生学、国際森林資源論など